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東京高等裁判所 昭和49年(く)36号 決定

少年 I・S(昭二七・二・一生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣意は、本人の抗告申立書記載のとおりであり、所論は結局事実誤認および処分不当の主張に帰するものである。

しかし関係記録によれば、本人は昭和四七年八月二五日東京家庭裁判所において医療少年院に戻し収容の裁判を受けた後、昭和四八年一一月一六日東京医療少年院より仮退院を許されて更生保護会「○○園」に帰住し、以来東京保護観察所の保護観察下にあつたものであるところ、原決定記載のように、帰住以来保護観察所の再三にわたる就職斡旋にもかかわらず稼働意欲を欠き、映画、パチンコなどの遊びにふけり、無断外泊をして放浪生活を続け、金銭に窮すれば父親に金員を要求したり、売血、パチンコで捻出するなど無軌道な生活を送つており、右のような本人の行状は、犯罪者予防更生法第三四条第二項所定の遵守事項および同法第三一条第三項により関東地方更生保護委員会が定めた特別遵守事項に違反することが明らかであるばかりでなく、本人をこのまま放置するときは、犯罪を犯す危険もあり、その両親も、もはや本人を指導監督する意思を失つていること、更には本人の精神面、知能面および性格面における鑑別結果など諸般の事情にてらすと、本人を再教育のため昭和五〇年一月三一日まで医療少年院に戻し収容した原決定の措置はやむをえないものとしてこれを是認すべきである。論旨は理由がない。

よつて少年法第三三条第一項後段、少年審判規則第五〇条、第五五条により主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 石田一郎 裁判官 菅間英男 柳原嘉藤)

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